鯉が泳ぐ水路と古い町並みが見事に調和した、
映画のワンシーンのような風景。
東近江市五個荘金堂町は時が止まったような、古き良き佇まいが残る町。
この町から誕生した近江商人(五個荘商人)は、
いったいどんな人たちだったのでしょうか。
しがトコ編集部が訪ねました。
最初に足を運んだのがこちら「近江商人博物館」です。
展示室は3階にありますね。行ってみましょう!
さっそく近江商人、登場。
これが当時の行商スタイルなのですね。
近づいて、よく見てみると
お顔が隠れているもののイケメンの雰囲気?!
けっこうリアルに作られています。
服装はというと・・・
みてください、袖がパツチワークに。
こちらも。今でいえば、ジーンズの穴に
当て布をするような感覚でしょうか。
丁寧に補修をして、大切に着ていたことがわかります。
もちろんこの補修は、近江商人の奥さんが。
ひと針ひと針、きちんと正座して
針仕事をする姿が浮かびます。
行商で出張が多かった旦那さん(近江商人)を思いながら
丁寧に縫っていたのでしょうね。
そんな(余計な)ことまで想像してしまうほど、
この継ぎはぎには、愛が溢れているのを感じました。
「近江商人博物館」の学芸員、上平さん。
女性の学芸員さんなので、
それならやっぱり!と、こんな質問を。
「女性ならではの視点で、近江商人のここがスゴイを
教えていただけますか?」
「それなら、これですね」と指さす先には数々の美しい裁縫作品が!
「これは近江商人の妻たちが作っていたもので、
“始末のかたち”の美しさは本当に見事ですよ」と話す上平さん。
この美しい小物入れ、じつは着物の端切れなどを
再利用して作ったものなんです。
近江商人の妻たちは「もったいない!」の精神を
徹底していたんですね。
そのことを説明したパネルがありました。
「もったいない!」を徹底して受け継ぐことは、
商人としての成功への第一歩なのです!
そして、近江商人の女性たちをさらに紹介する
こんな展示コーナーを発見しました。
江戸時代に「女子のテキスト」が存在していたなんて!
気になる内容は・・・
村名、人名、児状、用文章、商売往来、女庭訓状
などについて書いてあるテキストを見本に習字をし、
商家の女性として必要な立ち居ふるまい、裁縫技術までを
学んでいたのだそうです。
そんな近江商人の女性の代表ともいえる人物が
このかた、塚本さとさん。
77歳の時に五個荘に淡海女子実務学校を設立。
女子教育に尽くしました。
ちなみに、これは近江商人の食事。
ご飯に自分の畑でとれる季節のお野菜をまぜて、
節約しながらも食事が楽しめるように。
そんな工夫がみられます。
地場産業の「麻布」の生産が
盛んだったので、五個荘商人が全国行商に持参したのが
近江麻布の生地サンプル帳でした。
今でも通用しそうなサンプル帳ですが、
江戸時代なので、もちろん一冊一冊、手作業で作られています!
近江商人の家訓もありました。
お金持ちになる秘訣が書いてあるそうです!
内容が気になるかたのために
お金がたまるのは運の良いひとで、
自分は運がないから・・・そんな考えを
すこしでも持っている人。これ読んでくださいね!
展示室を出ると、なにやら視線が!
ふりかえるとそこに、当時の近江商人の写真がありました。
「近江商人になりたいですかー?」
にこにこ笑顔で、東近江観光協会の清水さんが
なにやら運んできました。
え、それはもしかして・・・
・・・天秤(てんびん)棒?
じゃじゃーん!
コスプレをすると、気分が高まります!
みょうに楽しくなってきました。
でも、この天秤棒がすごく重い!
2つ合わて10kgの商品を運んでいます。
歩くたびに天秤がゆらゆらと動いて・・
すぐギブアップしてしまいました。
当時はこんな姿で、山道を歩いたり
じゃり道を歩いたり・・・近江商人の道中を考えただけでも、
大変な苦労があったんだろうなぁ。
番頭さん体験もしてみました!
近江商人博物館で、体験を満喫したあとは歩いて10分ほど。
金堂の町並みの中にある「近江商人屋敷」へ。
金堂の町並みは、キレイな水路と立派な屋敷が並び、
雰囲気たっぷりのエリア。
水路には、町によく似合う錦鯉が。
なんと、手をたたくと、近寄ってきてくれるんですよ。
錦鯉だけに、故郷に錦を飾りたい(?!)
そんな思いで近寄ってきてくれるのでしょうか?
「近江商人屋敷 外村宇兵衛邸」へとおじゃまします。
出迎えてくれたのは、近江商人屋敷職員の安原さん。
「この場所は、近江商人を目指す子どもたちの躾教育や
女中さんの花嫁修業の場だったんですよ」
「あれを見てください」と指さす方をみると
近江商人の妻の心得が台所の入口に!
「これを全部を守るのは、ちょっとしんどいですよね」
と苦笑いする取材班。
「じゃあ、ちょっと良いものをお見せしましょうか」と
意味深に笑う安原さん。
「ここなんですけどね」と、目を凝らしてみると、
なんと“抜け毛”を治すレシピが!
桑の実、よもぎなどの材料や、抜け毛薬の作り方まで。
近江商人の妻は、なんと旦那さま思いなのでしょう!
そこに暮らした人々の日常を感じることができる
「近江商人屋敷」を後に、帰路へ。
雰囲気のある路地裏から大通りに出たところで、
可愛らしい近江商人と出会いました!
ずいぶん歩き疲れた様子の近江商人くんですが、
天秤棒を担いでまだまだがんばっています。
近江商人が生きた時代にタイムスリップしたような
歴史ある町並みが美しい東近江市五個荘金堂町。
ここで暮らした、女性たちの主人に対する思いまでもが
伝わるような、個性を感じる展示物にも出会えました。
全国各地の行商で、旦那さんがなかなか家に帰ってこない、
その状況があたり前だった商家の妻たち。
どんなに離れていても愛情をもった暮らしぶりと、
子どもたちの成長をしっかりと導く心の余裕。
旦那さんが長期の行商で家に帰らずとも、
妻が主導となって、家庭を守るだけでなく、
子どもたちの道徳教育や技術習得にまで力を注ぐ。
たくましく、でも繊細な心遣いと、前向きな明るさを持つ、
そんな素敵な女性像と出会えた
五個荘さんぽでした。
ライター:亀口美穂(しがトコ編集長)
大阪府堺市生まれ。結婚・出産を機に滋賀へ移住。住んで初めて分かった滋賀の魅力をもっと多くの人に伝えたい!という想いから「しがトコ」を運営。“自慢したくなる滋賀”をコンセプトに、子育て傍ら滋賀を練り歩く。
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